Vol.68 働く世代の新習慣!歯とからだのW健診
2025.09.26生涯を通じた歯科健診、いわゆる「国民皆歯科健診」を推進するために、厚生労働省がモデル事業を実施しています。
歯周病のチェックは、本来、歯科医師や歯科衛生士が機器を用いて行いますが、時間や手間がかかります。そこで、その入口として、歯周病のスクリーニング検査を簡易キットで行うモデル事業が募集され、今年は会社で参加することになりました。

なぜ歯周病のスクリーニング検査を行うのか?
歯周病は、歯と歯肉や歯槽骨などの周囲組織に感染が起こり、慢性的な炎症を生じる疾患です。
歯と歯肉の境目(歯肉溝)の奥にある「歯周ポケット」に感染が生じると、酸素が届かない環境で歯周病の原因菌である「嫌気性菌」が増殖します。これらの菌が放出する毒素や酵素によって炎症が起こり、歯ぐきや歯槽骨が破壊されます。進行すると歯を支える組織が失われ、最終的に歯が抜け落ちてしまうのです。
歯の健康を守るために
働く世代は歯周病などの罹患率が高い一方で、歯科健診の受診率は低く、職域を含めた健診の充実が必要とされています。そのためには、歯科健診の効果検証や有効性の普及啓発が欠かせません。
近年注目されているのが「フレイル」との関係です。働く世代ではメタボが注目されがちですが、加齢とともに「やせ」の害も重要視されています。やせの一因には「噛めない・飲み込めない」といった口の問題があり、これは歯科健診と大きく関わっています。

口の中は外界とつながっているため無菌ではありません。そのため歯の清掃は毎日欠かさず行う必要があります。歯や歯周病対策は、受診者自身の自己管理能力を高め、実践することがカギとなります。
セルフケアとプロケア
歯科の領域では「セルフケア」と「プロケア」という言葉が使われます。
• セルフケア:自分自身で日常的に行うお口の健康管理。
例:毎日の歯みがき、デンタルフロスや歯間ブラシでの清掃、歯ぐきの腫れや出血の自己チェックなど。
セルフケアは大切ですが限界があります。歯ブラシでは硬くなった歯石を取れませんし、奥歯の裏側や歯周ポケット深部にはどうしても磨き残しが生じます。
• プロケア:専門家(歯科医師・歯科衛生士)が定期的に行うチェック・歯石除去・バイオフィルム除去など。
セルフケアで取り切れない汚れや見落としがちな病変をカバーします。

プロケアの頻度
かかりつけの歯科医院で定期チェックを受けた経験のある方も多いでしょう。一般的には「半年に一度、年2回」が目安とされていますが、近年の研究では、6か月ごとと12か月ごとで歯周炎や歯周ポケットに有意な差はほとんど認められないとの報告もあり、頻度については一定していません。
また、個人のリスクによっても適切な間隔は異なります。喫煙者や慢性疾患を持つ方などハイリスクの人では3か月ごとの受診が望ましいといった意見もあります。
歯は再生しないため、今ある歯をいかに長く使い続けるかが将来の食生活に大きく影響します。かかりつけ医で定期チェックを受けている方も、そうでない方も、このスクリーニング検査を機に、ご自身の口の状態を見直してみてはいかがでしょうか。