Vol.74 免疫力アップが鍵!年末の疲れと風邪を寄せ付けないための「食と睡眠」
2025.12.26一年の締めくくり、師走の12月となりました。年度末の繁忙期で人の移動も多い時期です。
寒い時期は、インフルエンザなどが流行します。年末年始のイベントも重なり、一年で最も体調管理が難しい時期ですね。
この「高負荷かつ高リスク」の時期を乗り越えるには、免疫力アップが鍵です。
無理がたたって体調を崩してしまっては、仕事の成果も楽しみにしていたイベントも台無しになってしまいます。
笑顔で新年を迎えるために、「免疫力を上げる食と睡眠」について考えてみましょう。
免疫力を高める食事:食物繊維「25g」を目標に
免疫系細胞の約7割は腸、特に大腸粘膜に集中しています。
これらの免疫細胞を活性化するのが腸内細菌です。
ですから、免疫力を上げるためには腸内環境の整備が鍵となります。
腸内細菌の種類と数を増やし、善玉菌が優位な状態にすることで免疫力は格段にアップします。
この「腸活」に欠かせないのが食物繊維です。
食物繊維は単に便通を良くするだけでなく、摂取不足が生活習慣病の発症に関連するとの報告が多く、その重要性から目標量が設定されています。
「日本人の食事摂取基準2025」によると、WHOのガイドラインなどを踏まえ、少なくとも1日当たり25gの摂取が望ましいと考えられています。
食物繊維は食物に含まれていますが、人の消化酵素では消化されない成分をいいます。
他の栄養素と違い小腸で吸収されず、そのまま大腸に到達するので、便のかさを増やして腸を刺激し、腸の動きを活発にします。
また、脂質やコレステロールなどを吸着し体外に排出するので、コレステロール値を下げる効果があります。
食べ物の消化吸収を緩やかにするため、食後の血糖値上昇を緩やかにする働きもあります。
そのため、2型糖尿病の発症リスク低下と関連があると報告されています。
腸内細菌に良い効果があり、生活習慣病の予防効果もあることから、第6の栄養素とも呼ばれています。
睡眠不足が招く「病気のリスク」
免疫機能は体内時計によって制御され、約24時間周期で活動量が変動します。
また、免疫細胞の数は血中を循環する時間帯とリンパ組織などに再配置される時間帯とで、明確なリズムを示すことがわかっています。
ヒトの身体は、寝ている間に防御力を強化するシステムがあります。
まず、体に侵入した病原体の情報から二度目以降の感染に備えて抗体を作ります。
さらに「サイトカイン」を増やすことで病原体を攻撃する一方、身体を休ませるために眠らせるという役割も担っています。
このように特定の免疫細胞は、覚醒中の活動期に数が少なくなり、夜間の睡眠中(休息期)にリンパ節などの組織に移動し、免疫記憶の形成などを促進すると考えられています。
つまり、質の良い睡眠は、免疫システムが力を発揮するための不可欠な「メンテナンス時間」なのです。
この24時間周期の変動が乱れると、健康リスクが高まるという臨床的・疫学的な証拠(エビデンス)は豊富に存在します。
交代勤務(シフトワーク)や慢性の睡眠不足などで長期的にリズムが乱れると、心血管疾患、代謝症候群、一部の癌、喘息、関節リウマチなど慢性炎症性疾患の発症リスクを高めることが明らかになっています。
また、慢性的に睡眠時間が短い人は、感染症にかかりやすくなるといった調査結果もあるようです。
忙しい時の「ここ一番」の体調不良を回避するためにも、十分な量と質の睡眠を確保することが必要です。
質の良い睡眠と免疫強化のために
食事と睡眠を充実させるためには、規則正しい生活リズムが基本です。
日中の活動と夜間の睡眠のメリハリをつける規則正しい生活習慣から生まれます。
毎朝しっかり朝食を摂り、体内時計をリセットすることが夜の質の高い睡眠につながります。
「守りの栄養素」の強化
• 発酵食品(ヨーグルト、納豆): 善玉菌を直接摂取。
• 食物繊維(根菜、きのこ、海藻): 善玉菌のエサを供給。
• たんぱく質(肉、魚、卵): 免疫細胞や抗体の材料を補給。
「身体活動」の強化
適度な運動習慣は、睡眠の質を高めるだけでなく、自律神経のバランスを整え、「こころ」の側面からも免疫力をサポートします。
日中は身体を動かし、活動量を維持しておきましょう。
通勤や外出などスキマ時間をうまく使いつつ、2~3日から1週間くらいでバランスをとれば大丈夫です。
成人の場合、1日8,000歩、有酸素運動であれば1日30分が目安です。日中の活動で体内時計が整い、夜の睡眠の質が上がります。
夜の過ごし方で生活リズムを整える
就寝直前の夜食は消化にエネルギーを使い、睡眠の質を低下させます。
夕食は就寝3時間前までに済ませることを心がけましょう。
忙しい時は夕方におにぎりやパンなど主食をとり、遅い時間に食べる量は控えると胃腸が休まり、睡眠の質が上がります。
質の良い睡眠は、日中の活動と夜間の睡眠のメリハリをつける規則正しい生活習慣から生まれます。
年末の疲れを溜め込まず、風邪を寄せ付けない体づくりは、最高の仕事納めと快適な新年を迎えるための基盤です。
戦略的な「食と睡眠」で、この多忙な時期を健康的に乗り切りましょう。






