Vol.77 パソコン作業はなぜ肩がこる? 「スマホ首」時代の新常識と、今日からできる対策
2026.02.13スマートフォンは今やほぼ全世帯に普及し、私たちの生活に欠かせないものとなりました。
一方で、仕事ではパソコンと向き合う時間が長く、画面をじっと見続けているせいか、慢性的な「肩こり」に悩まされている方も多いのではないでしょうか。
本コラムでは、なぜ肩こりが起きるのかという仕組みと、今日からすぐに試せる具体的なケア方法をご紹介します。
「肩こり」の正体
日本整形外科学会によると、「肩こり」には、肩周囲の症状と付随症状があります。
• 首すじ、首のつけ根から、肩または背中にかけての張り、凝り、痛み
• 症状がひどい場合には頭痛や吐き気を伴うこともある
これらの症状と関連するのは、僧帽筋(そうぼうきん)という筋肉です。
僧帽筋は、首の後ろから肩、そして背中の中央までを覆う、大きなひし形の筋肉です。
頭や腕を支える筋肉で、緊張すると肩こりが起きます。
パソコン・スマホ作業で肩がこるメカニズム
パソコンやスマートフォンを使った作業が肩こりを引き起こす最大の理由は、「拘束性(こうそくせい)」にあります。
画面に集中するあまり、まるで身体を固定されたかのように同じ姿勢で固まってしまうことが、肩への大きな負担となっています。
【原因1】動かない「頭」と「腕」
通常、固定されているディスプレイの情報を正確に読み取るために、私たちは無意識に頭や眼の位置を固定します。そしてキーボードやマウスを操作する手は、ほぼ同じ場所に固定されます。この「動かない」状態が、「拘束性」です。
成人の頭の重さは、一般的に体重の1割程度、ボーリングのボール程度の重さです。これを支えるのが「僧帽筋」です。
同じ姿勢で僧帽筋の負荷がかかっていると、血行は悪くなり、疲労物質を溜め込み、「こり」や「痛み」になるのです。
【原因2】不自然な「姿勢」
日本整形外科学会も、肩こりの原因として「姿勢の良くない人(猫背・前かがみ)」を挙げています。
特にノートパソコンやスマートフォンは、画面が目線よりも低い位置にあるため、頭を前に突き出し、背中が丸まった姿勢になりがちです。
画面に集中する前傾姿勢では、頭を支える首や肩の筋肉にかかる負担は増大し、僧帽筋は常に引き伸ばされて緊張し、血行が悪化してさらに硬くなります。
硬くなった筋肉は正しい姿勢を保つことをより困難にし、さらなる前かがみを招くという悪循環に陥ります。
【原因3】気づかぬうちの「眼の疲れ」と「ストレス」
肩こりの原因は、筋肉や姿勢の問題だけではありません。ディスプレイを長時間見つめると、目が疲れます。
画面の文字が見えにくいと、無意識に画面を覗き込む姿勢になり、さらに前かがみになります。
また、精神的なストレスは自律神経のバランスを乱し、全身の筋肉を無意識に緊張させます。これが血行不良を招き、肩こりを助長するのです。
今日から実践!肩こりを撃退する3つの習慣
肩こりを予防・改善するための習慣を、「環境」「作業習慣」「セルフケア」という3つ視点からご説明します。
「環境」を整える – 痛み知らずのワークスペース作り
まず、体に負担をかけない作業環境を構築することが最も重要です。厚生労働省のガイドラインに基づいた、理想的な姿勢を保つためのチェックリストを確認してみましょう。
あなたの作業姿勢、大丈夫?

ディスプレイ:画面の上端が、目の高さとほぼ同じか、やや下になっていますか?目から画面までの距離は40cm以上確保できていますか?
腕・手首:肘の角度は90度以上を保ち、キーボード操作時に手首が自然な角度になっていますか?
椅子:深く腰かけ、背もたれに背中をしっかりつけていますか?
足:足裏全体が、床にしっかりと接していますか?
「作業習慣」変える – 「こまめな休憩」が最大の予防策
どんなに良い環境でも、同じ姿勢を続ければ筋肉は硬直します。最大の予防策は、作業の仕方に「動き」を取り入れることです。
- ルール1:1時間ごとに休憩を挟む厚生労働省のガイドラインでは、「一連続作業時間が1時間を超えないようにし、次の作業までに10分~15分の作業休止時間を設ける」ことが推奨されています。タイマーをセットするなどして、意識的に作業を中断しましょう。
- ルール2:作業の合間に「小休止」と「立ち上がり」を1時間の作業の途中でも、1〜2回、1〜2分程度の小休止を取り入れましょう。少し席を立って歩いたり、窓の外の遠くの景色を眺めたりするだけでも、筋肉の緊張を和らげ、目の疲れをリフレッシュする効果があります。
「セルフケア」を習慣化する – ストレッチと温めで血行促進
日々の作業で蓄積した疲労は、その日のうちにケアすることが大切です。オフィスや自宅で簡単にできるセルフケアを習慣にしましょう。
- デスクでできる簡単ストレッチ日本整形外科学会も推奨する、座ったままできる簡単なストレッチです。
- 1. 肩の上げ下げ運動
◦ 息を吸いながら、両肩を耳に近づけるように「ぐっ」と引き上げます。
◦ 息を吐きながら、一気に力を抜いて「ストン」と肩を落とします。
◦ これを数回繰り返します。
- 2. 肩の体操療法
◦ 両手を組んで、息を吸いながら天井に向かってぐーっと背伸びをします。
◦ 心地よく伸びを感じるところで数秒キープし、ゆっくりと腕を下ろします。
◦ これを数回繰り返します。
- 体を温めて血行を良くする筋肉の緊張をほぐし、血行を促進するには、体を温めるのが効果的です。
◦ 蒸しタオルなどで肩を温める
◦ ゆっくりと入浴し体を温め、リラックスする
これらの対策を試しても症状が改善しない場合、それは単なる肩こりではないかもしれません。最終章で、専門医への相談を考えるべきサインについて解説します。
これってただの肩こり?専門医に相談すべきサイン
多くの肩こりは生活習慣の改善で予防・軽減できますが、中には他の病気が原因で似たような症状が現れることがあります。
日本整形外科学会は、頸椎椎間板ヘルニアなど首の骨の病気や、五十肩など肩関節の病気が肩こりのような症状を引き起こす可能性があると指摘しています。
以下のようなサインが見られる場合は、自己判断で放置せず、速やかに整形外科を受診しましょう。
• ストレッチや休息をとっても、痛みが全く改善しない
• 腕や手指にしびれや脱力感がある
これは、単なる筋肉の疲労ではなく、首の骨(頚椎)で神経が圧迫されている可能性を示唆する重要なサインです。
• 痛みがだんだん強くなっている、または痛みの範囲が広がっている
自分の体のサインを見逃さず、専門医への相談をためらわないことが大切です。
いかがだったでしょうか。パソコンは今や生活に欠かせないツールで、情報があふれる現代だからこそ、自分の体を守る知識が不可欠です。
今日から一つでも実践することで、あなたの体はきっと変わっていきます。ご自身の体を大切にし、健康で快適なデジタルライフを送りましょう。
厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署 情報機器作業における労働衛生 管理のためのガイドライン
日本整形外科学会 症状・病気をしらべる 「肩こり」





