vol.59 あなたの視力、大丈夫?―デジタル時代の目の健康法―
2025.05.09いまや、スマートフォンは生活に欠かせない存在となっています。
総務省の調査※1によると、スマートフォンの普及率は、20〜30歳代で99%、40〜50歳代で95%、60歳代でも80%以上に達しています。さらに、日本人のスマホの平均利用時間は1日約3時間24分にのぼり、40歳代では3時間04分、60歳代でも2時間00分と報告されています。
加えて、仕事でもパソコンやタブレットなどのデジタル機器を使う機会が増えたことで、私たちの目はかつてないほど酷使されています。
知っていますか?「VDT症候群」
「VDT(Visual Display Terminal)症候群」とは、パソコンやスマホなどの画面を長時間見ることで起こる目や体の不調のこと。
別名「IT眼症」とも呼ばれます。
目の症状だけでなく、肩こりや腰痛、倦怠感、集中力の低下、抑うつ状態など、全身にさまざまな影響を及ぼすことがあります。だからこそ、日頃からの対策がとても大切です。
長時間の画面作業の影響
スマホと目の距離は約20cm、PCの画面との距離は約50cmが一般的です。
特にノートPCやタブレットは画面が小さく、目を動かす範囲が狭くなるため、長時間の使用で目の筋肉が疲れやすくなります。
「スマホ老眼」になっていませんか?
私たちの目の中には、水晶体(レンズ)があり、その周囲の筋肉がピントを調整しています。近くを見るときはレンズが厚く、遠くを見るときは薄くなります。
しかし、長時間近くの画面を見続けると、目の筋肉が緊張したままとなり、遠くがぼやけて見える「スマホ老眼」と呼ばれる現象が起こります。これは一時的なものですが、放置すると慢性化し、若い世代でもピント調整力が低下することがあるため注意が必要です。
ドライアイ
目がかすむ、ゴロゴロした違和感がある、それは「ドライアイ」かもしれません。
通常、目は涙によって潤いが保たれていますが、スマホやパソコンの画面を長時間見続けると、まばたきの回数が減り、目が乾燥しやすくなります。
日本人成人の約2割がドライアイと推定され※2、働く人を対象とした調査では、約6割がドライアイの症状を自覚。さらに、PCやスマホを1日4時間以上使う人の約7割がドライアイ※3とも言われています。
また、コンタクトレンズ使用者はドライアイになりやすく※4、長時間の装着はさらにリスクが高まります。加えて、空調による室内の乾燥も原因の一つ。環境への配慮も大切です。
目の健康を守るためにできること
① 画面を見る時間をコントロールする
長時間の画面作業を避け、こまめに休憩を取りましょう。おすすめは「20-20-20ルール」です。
20分ごとに、20秒間、20フィート(約6メートル)先を見る
アメリカ眼科学会でも推奨されているこの方法で、目の負担を軽減できます。
PC作業の合間に印刷を取りに行くなど、身体を動かす事も組み合わせて画面を凝視する時間を長くしないことが、一番の対策です。
② 目を意識的に休める
目に着目したケアもおススメです。身体を動かすときにセットですると、習慣化できますね。
• まばたきを増やす(目を閉じるだけでもOK!)
• ホットタオルで目を温める(血行が良くなる!)
• 目の体操をする(遠くを見たり、目をぐるぐる回す)
③ 姿勢を整える
姿勢が悪いと目と画面の距離が一定にならず、目の負担が増加します。また、肩や腰など身体が痛むようにもなります。
正しい姿勢を保つように、椅子や机、画面の角度の調整をしましょう。
• 椅子に深く座り、背筋を伸ばす
• 画面の高さを目線と同じ位置にする
• キーボードやマウスの位置を適切にする
④ 画面の設定の工夫
明るさも目に影響を与えます。適切に調整しましょう。
• 画面の明るさを適度に調整(明るすぎても暗すぎてもNG)
• ブルーライトカット機能を使う(スマホ・PCの設定で「夜間照明を選択する」)
• フォントサイズを大きくする(目の負担を減らす)
まとめ
スマホやパソコンを使うことは避けられませんが、「ちょっとした工夫」 で目の健康を守れます。
毎日の小さな積み重ねが、目の健康を長く保つカギになります。今すぐできる対策を始めて、未来の自分の目を守りましょう!
※1総務省「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査(2023年)」 https://www.soumu.go.jp/
※2慶応義塾大学 2019年 Shigeyasu et al. “Prevalence and risk factors of dry eye disease in Japan” (2019)
※3「オフィスワーカーのドライアイ実態調査」(2022年)
※4日本眼科学会「コンタクトレンズとドライアイの関係」(2021年)